サイトにあげるまでもないSSおきば
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「トミーまだー?」
月景さん(@thukinashi26)宅 アディさん&ヴェーギルさんのお誕生日SS。
キュートとほのぼのの極みのような各種元ネタ
不満げに急かす声は二つ。きれいに重なって足元から聞こえてきた。
その口調と外套を引っ張ってくる動作から、明言されなくても不満だというのはよく分かるのだが、今は紅茶を所望されて仕方なく火をつけたばかりのところだ。
「急かしても水は沸かない」
「はーい」
やはり揃って応える声に視線を向けると、足元にまとわりつく子供はすでに二人だけでこそこそ話し合っている。
前に一度、鎌を背負っているときに外套で遊んだのを注意して以降、この二人──アディとエミィは「鎌を持っていなければ外套で遊んでもよい」と学んでしまったらしい。
それこそ「移動する秘密基地」くらいの扱いを受けているような気もする。
「ねぇねぇトミー」
「今度はなんだ」
「今日誕生日だからお菓子もほしい」
「そういうことは一週間前に言え」
秘密基地より都合よく使われているような気もする。
左右からブーイングが聞こえてくるが、残念ながらここでの食糧管理について自分は一切の権限を持っていないのでどうにもならない。明らかな人選ミスだ。
というより……部屋から出た途端に足元に飛びついてきて、誕生日だからというよく分からない理屈で紅茶を要求し、キッチンまで外套を引っ張って来ている辺り、子供らしくその場の勢いで動いている感が否めない。人選とかいう問題でもないのかもしれない。
とりあえず追加要求は聞かず、最初に要求された紅茶だけ準備を進める。
ティーポットが一つとカップが二つ。さらに茶葉を出そうとしたところで、
「あっ待って」
「葉っぱはこれがいい」
追加リクエストとして外套の合わせから出てきたのは、無地の紙袋だった。
風を使って受け取ると確かに茶葉らしく軽いが、かと言って葉だけ用意済みというのも違和感があった。そもそもどこで手に入れたのか、と思いながら袋の口を開けると、まず飛び込んできたのはブドウの香りだった。
しかし、中に乾かした実が入っている様子はない。一見すると、普通の茶葉と同じようにしか見えない。
「【世界】がくれたの」
「『しさくひん』なんだって」
「……それは本当に大丈夫なのか」
とは言ったものの、「果物の風味を持った茶葉」の噂なら、まれに聞くことがあった。
思えば、「葉に果実の風味を持たせる代わりに、肝心の果実に毒を含む」……という道楽の極みのような植物の開発に、あの【世界】が絡んでいないはずもなかった。
不信感は増すが、袋からポットに移すだけでも強い果実の香りを放つ葉は、いっそ本来食用だった果実よりも意識に与える刺激が強いようにも感じる。外套の中にいたアディとエミィも、隙間から顔を出してそわそわと落ち着かない。
丁度よく沸いた湯を通すと、香りの強烈さは多少和らぎ、代わりに蒸気に運ばれて部屋に広がっていく。
「さすがにそこで飲むつもりはないよな?」
念を押すように言えば、アディとエミィはすぐに外套から飛び出した。近くのテーブルセットに向かう背中を追って、ポットとカップを運ぶ。
カップはおとなしく椅子に座った二人の前に。葉が開くのを待つのも辛い、という様子の二人に紅茶を注いでやると、思ったよりも明るい色が流れ出た。
「誕生日おめでとう」
揃ってティーカップを持った二人は、そっくりな笑顔を浮かべていた。
月景さん(@thukinashi26)宅 アディさん&ヴェーギルさんのお誕生日SS。
キュートとほのぼのの極みのような各種元ネタ
トミーとロリショタ………鎌が危ないのをどうしようとか考えてるトミー兄さん………… pic.twitter.com/5HgrpCm6KQ
— 月景@6/10アディ&団長誕 (@thukinashi26) 2016年4月27日
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プロフィール
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射月アキラ
HP:
性別:
女性
自己紹介:
一次創作・オリジナルなファンタジー小説書き。
普段はサイトで好き勝手書き散らしているが、そこでページ作るのもめんどいと思ったらこっちで好き勝手書き散らす。短い話はだいたいこっちに投げられる。
褒めても喜びけなしても喜ぶ特殊体質。
ついった:@itukiakira_guri
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